公益社団法人 熊本県理学療法士協会

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「熊本を襲った地震と津波から減災の手がかりを考えよう」【シリーズ1】

熊本における地震、津波による災害の予測(その2)

 今回は、前回に続いて被害想定と避難について少し話をしたいと思います。

建物と人的被害
5km程度津波が遡上浸水した場合の建物被害は、居住地の標高にもよりますが、標高6m域までに絞っても約2万棟に及ぶことが想定されます。特に河内町船津・塩屋、松尾町近津・上松尾は有明海津波では建物流失被害が甚大であったことから、危険性の高い地域といえます。
一方人的被害では、沿岸域から5km、標高6m以下の浸水危険域に該当する行政区は210。平成17年国勢調査人口データをもとに被災人口を推定すると、143000人余りに上ります。さらに災害時要援護者に該当する乳幼児、高齢者は、約38000人弱で、被災者の26%程度を占めます。おそらく一般に災害時要援護者に該当する被災者人口は推定4万人を超え、全体の30%以上になる恐れもあります。東日本大震災の津波による犠牲者の実に64%が、60歳以上の高齢者であった事実を考えると「想定外」の被害を想定し対策を講じる必要があると思われます。

避難について
 有明海津波では津波が熊本を襲来するまでの時間は約15分ほどでした。この間に避難できる距離は歩きで1km程度、走りでも2km程度で、女性や高齢者、乳幼児同行や車椅子の場合にはさらに遅くなります。低地では、少なくとも3階建て以上の建物に避難する以外に方策はありません。ましてや在宅の乳幼児や高齢者、障害者等を含む災害時要援護者の避難には多くの制限があります。また、「津波火災」のリスクも考えなければなりません。浸水危険域周辺一体の人口は約10万人。近隣の高い建物に避難したとしてもその後に発生した津波火災では、孤立した建物では防ぎようがない上、2次避難さえ不可能となります。
  地震や津波等による被害をいかに小さくするかは、どのような避難手段をとるかも極めて重要です。つまり、発生した事象を正確に捉え、瞬時に選択すべき避難手段を行動に移すことが何より大事なのです。避難には主に、建物を中心とした垂直避難と屋外を出て安全な場所まで移動する水平避難があります。建物の倒壊の恐れがある場合には一刻も早く屋外に避難しなければなりませんが、落下物による被害も考えなければなりません。また、地割れや陥没、液状化による道路の崩壊によって避難路として車や車椅子などの利用は不可能になる可能性があります。また、水平避難でも車による避難が深刻な渋滞を引き起こし被害の拡大につながったことは、東日本大震災でも明らかです。災害時要援護者の避難は避難介助者の二次災害の恐れも引き起こします。地域の災害時要援護者の被害をどのように減らすか、悩ましい問題です。

おわりに
 6回に渡って過去に熊本を襲った地震、津波災害そして、これから起こりうる災害想定について話してきました。減災につながる道それは、私たちが常に最悪の災害シナリオを意識しておくことだといえるでしょう。(おわり)
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