公益社団法人 熊本県理学療法士協会

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「熊本を襲った地震と津波から減災の手がかりを考えよう」【シリーズ1】

熊本における地震、津波による災害の予測(その1)

 関東大震災では火災旋風等により4万人余りが地震後の火災の犠牲となり、阪神淡路大震災では建物の全半壊25万棟が示すように、建物の倒壊による犠牲者が全体の80%を超えることが報告されています。 直下型地震による災害想定は熊本県防災会議がまとめた平成24年度修正版『熊本県地域防災計画』に概要が示されています。ここでは、阪神淡路大震災レベルの断層直下型地震(超大規模地震)と関東大震災と阪神淡路大震災の中間型(大規模地震)の2種類を想定した被害の状況が想定され、超大規模地震では市外部での建物倒壊約27000棟、死者数900余名、大規模地震では約半数の13000棟、死者数約400弱といった具体的な数値予想が報告されています。規模や倒壊建物のわりに死者数が低く見積もられているように感じられますが、直下型地震においては火災や生き埋め等の被害想定を想定外以上に予想すべきではないかと考えています。
 残念ながら、津波による被害想定は上記報告書内には示されていません。2012年5月24日付熊本日日新聞には県が新たな防災計画を決定した記事に加え、「避難対策なお大枠」とした見出しで、県および市町村の防災体制や避難所の見直し、情報伝達方法の検討などやや危機意識が向上したものの、特に沿岸部における防災対策は県の地震、津波被害想定に関する中間報告待ちの状況にあることが述べられています。その背景には「津波による浸水域の想定とそれに伴う被害状況の予測が困難」であることが要因であるとしています。
先述した1889年の都市部直下型地震「熊本地震」、1792年に襲った眉山山体崩壊による有明海津波「島原大変肥後迷惑」を被害想定の資料として早急な被害想定が示されるべきでしょう。
 このシリーズでは、津波による災害発生を基本に被害想定のための浸水域の予測およびこれに伴う建物や人的被害等について熊本市を例に若干の資料を提示したいと思います。


津波による浸水被害

 津波に伴う浸水被害は地形や防潮堤や沿岸部の建物の立地状況、河川の有無や津波高、津波の遡上高等さまざまな要因を検討し予測する必要があります。精度の高い予測には専門的な知識や特殊な分析手法等が必要ですが、スマトラ島を襲った大津波をもとに津波高と沿岸部の地理的環境を指数化した「粗度係数」を組み合わせて、津波の遡上距離(到達距離)を簡便に算出する計算式が提示されています。熊本港周辺の防潮堤の高さはおよそ10m程度と見積もることが出来ることから、条件設定を津波高10m、粗度0として、予測式に当てはめると到達距離は、約5km前後津波は内陸遡上する可能性があります。熊本市白川流域を例にとれば、城山上代の一部、小島・中島町、八分字町、荒尾(アクアドーム周辺の一部)周辺まで浸水する恐れがあります。
なお、河川部の遡上距離はこの予測式には当てはまらないことから別に試算すべきですが、おおよそ浸水域の2倍の距離は遡上することを想定しておいた方が良いかもしれません。(有明海津波では白川河口域から約9km、長六橋のたもと辺りまで遡上したとされています)

(つづく)
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